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弾劾裁判所の歴史 / 昭和30年代

昭和30年代の歴史の目次です。スキップして本文の内容に入りたいときは、ここでエンターキーを押してください。
1 概観
2 罷免訴追事件
3 資格回復裁判請求事件
4 裁判官弾劾関係法規の改正
  目次は終わりです。ここから、本文の内容です。

1 概観

 昭和30年代には、罷免訴追事件が2件あり、弾劾裁判所は、いずれも罷免の判決を宣告しました。なお、これらの事件で罷免された2名の元裁判官から資格回復裁判の請求があり、弾劾裁判所は、1名については請求を棄却しましたが、もう1名については3回目の請求を認め(2回目まではいずれも棄却)、資格回復の決定をしました。

 制度面では大きな変革がありました。
従来、訴追委員会は、衆議院議員のみで構成されていましたが、昭和30年の国会法改正により、現在と同様、衆参両議院から同数の訴追委員が選出されることになりました。また、このときの改正を含め、弾劾法が4回にわたって改正されました。

 庁舎の関係では、事務局室が、昭和38年1月、参議院構内に移転しました。

2 罷免訴追事件

1) 帯広簡易裁判所判事に対する事件

ア 訴追されるまでの経過

 新聞報道をきっかけとして、訴追委員会は、川口簡易裁判所判事(昭和30年4月1日、帯広簡易裁判所に異動)に対する案件を職権により立件し、調査を行ないました。その結果、昭和30年8月27日、同簡易裁判所判事を訴追することを決定し、同月30日、弾劾裁判所に訴追状を提出しました。

 訴追事由の要旨は、次のとおりです。

訴追の事由
ア) 事件記録の不整頓等を放置し、395件の略式命令請求事件を失効させ、そのうちの約3分の2について検察官に再起訴を断念させた。
イ) あらかじめ署名押印した白紙令状用紙を職員に預けていたため、職員が白紙令状用紙に所要事項を記入して令状を作成交付した。また、相当な数の白紙令状用紙が庁外に持ち出された。
ウ) 知人から、仲介者に売却代金を横領されて困っているとの相談を受け、仲介者を裁判所に呼び出して返済を促す等、私人間の紛争に介入した。さらに、仲介者に対する逮捕状を請求されると、自ら逮捕状を発した。
エ) 略式命令を送達する際、要件について検討することなく勾引状を発し、自ら執行した。さらに、執行済の勾引状を記録に綴じさせなかったため、職員によって破棄された。
オ) 廷吏に調停事件を取り扱わせた。また、長期間にわたって出勤簿に押印せず、転勤に際して一度に行ない、職員の長期間にわたる不押印も放置していた。
  
 

イ 審理経過

 弾劾裁判所は、9月13日、同簡易裁判所判事の職務停止を決定し、10月11日に第1回公判を開きました。その後、翌31年2月25日の第12回公判まで審理が行なわれ、この間に取り調べられた証人は25名に及びました。また、2月5日には、裁判員3名が川口市に派遣され、現場検査が行なわれました。そして、4月6日、我が国の裁判官弾劾制度が始まって以来、最初の罷免の判決が宣告されました。

 判決理由の要旨は、次のとおりです。

弾劾裁判所の判断
 訴追事由ア)からオ)の事実を認定し、
 ア)、イ)、エ)については、裁判事務、司法行政事務監督に関する職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったものである。
 ウ)については、利益供与の約束等不純な動機や行為がなかったことは認められるが、裁判所の公正を疑わさせる結果を招くものであり、裁判官としての威信を著しく失うべき非行である。
 オ)については、いまだ職務を甚だしく怠り、又は職務上の義務に著しく違反したものとは認められない。
 よって、ア)、イ)、エ)の各事実は弾劾法2条1号に、ウ)の事実は同条2号にそれぞれ該当する。
 

 なお、罷免判決からまもない4月13日、元同簡易裁判所判事から、貧困のため訴訟費用を完納できないとして、訴訟費用執行免除の申立てがあり、弾劾裁判所は、5月9日、その申立てを認めました。

2) 厚木簡易裁判所判事に対する事件

ア 訴追されるまでの経過

 訴追委員会は、国民から厚木簡易裁判所判事に対する訴追請求を受けました。この裁判官は、昭和23年12月9日に罷免訴追をされ、昭和25年2月3日に不罷免の判決を受けた大月簡易裁判所判事(当時)と同一人です。訴追委員会は、調査を進めた結果、昭和32年7月11日、同簡易裁判所判事を訴追することを決定し、同月15日、弾劾裁判所に訴追状を提出しました。

 訴追事由の要旨は、次のとおりです。

訴追の事由
ア) 現地調停の帰路、相手方を除く関係者とともに申立人所有のオート三輪車に便乗して旅館に戻り、申立人から酒食の饗応を受けた。
イ) 前記事実について地方裁判所長に投書した者があることを知ると、相手方の親戚である調停委員に清酒1升を持参して相手方への善処を依頼した。また、宴席の費用を全額申立人の支払いに任せて2年以上経過していたが、訴追委員会の調査を受けた翌日、病気入院中の申立人を訪ね、自己と2名の調停委員分として2400円を急きょ支払った。
 

イ 審理経過

 弾劾裁判所は、7月29日、同簡易裁判所判事の職務停止を決定し、8月27日、第1回公判を開きました。この事件は、9月24日の第4回公判で結審しましたが、その間、2度の法廷外での尋問を含め13名の証人尋問が行なわれました。そして、9月30日、罷免の判決が宣告されました。

 判決理由の要旨は、次のとおりです。

弾劾裁判所の判断
 訴追事由ア)とイ)の事実を認定し、
 ア)については、裁判の公正、司法の権威を疑わさせる行為で、裁判官としての威信を失うべき行為である。
 イ)については、自己の非行を隠ぺいしようと種々奔走しようとしたことは裁判官の態度としては遺憾であり、裁判官としての威信を失うべき非行である。
 よってア)とイ)の事実はいずれも弾劾法2条2号に該当する。
 

3 資格回復裁判請求事件

1) 元帯広簡易裁判所判事からの請求

 昭和31年5月15日、元帯広簡易裁判所判事(昭和31年4月6日罷免)から弾劾裁判所に対し、弾劾法38条1項2号後段に基づく資格回復裁判の請求がありました。

 請求の事由の要旨は、次のとおりです。

請求の事由
 罷免の裁判において、
ア) これまで職務に精励してきたことや多くの嘆願書など、自分に有利な情状が十分に考慮されなかったこと、
イ) 事実の真相が十分に究明されなかったこと、
ウ) 罷免により収入が絶え、再就職も困難で生活に困窮していること
 

 これを受けて、弾劾裁判所は、訴追委員会に求意見しましたが、請求者の主張は全く理由がないという回答でした。その後、弾劾裁判所は、書面のみによって審理を行ない、7月11日、請求を棄却しました。

 理由の要旨は、次のとおりです。

弾劾裁判所の判断
 ア)については、弾劾裁判には刑事裁判の執行猶予に相当する制度はなく、罷免の事由に関連する情状以外の情状は考慮されない、
 イ)については、審理は十分尽くされている、
 ウ)については、資格回復の裁判をすることを相当とする事由にあたらない。
 

2) 元厚木簡易裁判所判事からの請求(1回目)

 昭和33年3月15日、元厚木簡易裁判所判事(昭和32年9月30日罷免)から弾劾裁判所に対し、弾劾法38条1項2号後段に基づく資格回復裁判の請求がありました。

 請求の事由の要旨は、次のとおりです。

請求の事由
ア) 請求者は、罷免の訴追を受ける前に退官願いを提出していたのに、これが最高裁判所に届けられないまま放置されたために依願退官ができず、その結果、罷免の訴追を受けることになったこと、
イ) 罷免の結果、職を失い路頭に迷っていること。
 

 これを受けて、弾劾裁判所は、訴追委員会に求意見しましたが、請求者の主張する事由は、資格回復の要件に該当しないという回答でした。その後、弾劾裁判所は書面のみによって審理を行ない、3月25日、請求を棄却しました。

 理由の要旨は、次のとおりです。

弾劾裁判所の判断
 ア)については、罷免の事由と関連しない情状であり、弾劾裁判において考慮することはできない、
 イ)については、資格回復の裁判をすることを相当とする事由にあたらない。
 

3) 元厚木簡易裁判所判事からの請求(2回目)

 昭和33年10月21日、元厚木簡易裁判所判事から弾劾裁判所に対し、弾劾法38条1項2号に基づき、同判事自身の供述調書などの証拠を添えて、2回目の資格回復裁判の請求がありました。

 請求の事由の要旨は、次のとおりです。

請求の事由
 罷免の判決は、事実認定を著しく誤っており、真相を証明する新たな証拠があること。
 

 弾劾裁判所は、訴追委員会に求意見しましたが、請求者の主張は全く理由がないという回答でした。その後、弾劾裁判所は、書面のみによって審理を行ない、翌34年2月10日、請求を棄却しました。

 理由の要旨は、次のとおりです。

弾劾裁判所の判断
 請求者が提出した証拠は、いずれも罷免の事由がないことの明確な証拠にはあたらないし、その他資格回復を認める事情もない。
 

4) 元厚木簡易裁判所判事からの請求(3回目)

 昭和37年10月9日、元厚木簡易裁判所判事から弾劾裁判所に対し、3回目の資格回復裁判の請求がありましたが、前2回と異なり、弾劾法38条1項1号に基づくものでした。

 請求の事由の要旨は、次のとおりです。

請求の事由
 罷免の判決から5年を経過し、その間、謹慎し、刑罰その他の社会的非難を受けることもなく、厳粛な生活をしてきたこと、
 資格が回復されたときは余命を弁護士として人権擁護、社会奉仕に捧げたいこと。
 

 弾劾裁判所は、請求者本人と証人2名を尋問するなどした結果、翌38年2月4日、資格回復の決定をしました。

 理由の要旨は、次のとおりです。

弾劾裁判所の判断
 罷免の裁判から5年を経過しており、請求者が今後再び、かつて弾劾されたような過ちを犯すことはないであろうと推認でき、相当とする事由がある。
 

4 裁判官弾劾関係法規の改正

 この年代に弾劾法は4回にわたって改正されていますが、主なものは次のとおりです。

昭和30年の改正(国会法の一部を改正する法律、同年法律第3号)
 訴追委員会は、その設立以来、国会法の規定により衆議院議員のみで構成されていましたが、昭和30年1月24日に国会法の一部を改正する法律が成立したことにより、現在と同様、衆参両議院から同数(各10名)の訴追委員が選出されることになりました。
 
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